スペインでアジア人差別ってあるの?

スペインと日本

新型コロナウイルス感染症の問題で、
話題になっている欧州でのアジア人差別。

スペインでも普段から差別があるの?
と訊かれます。

この問題を語るのは難しい。
明らかにという場合を除いては、
受け止める人によっては差別だと感じたり、感じなかったりします。

なので、
スペインに12年間住んでいる一個人として、
私の経験談・感想を書いてみます。

読んで、そうは思わなかったり、
気分を悪くされる人がいたらスミマセンが、
スルーしてください。

スペイン移住を考えている人に、
こんな感じだよ、と何かの参考になればと思います。

スペインでアジア人差別を感じたことは?

一言であるのかないのか、と訊かれると、
「ある」と答えます。

一番、一般的なのは、
スペイン在住の全ての日本人が一度は経験しているであろう、
道で知らない人に「チーナ!」「チニータ!」と叫ばれること。

チナというのは、スペイン語でChina=中国人という意味。
正確に言うと、男性名詞・女性名詞があるので、
chino =中国人男性、china =中国人女性のこと。

つまり私の場合は女性なので、
「チーナ(中国人)!」と叫ばれるということです。
時々、ご丁寧に目を細めるジェスチャー付きの時もあります。

そこで、これが差別なのかどうか、という問題ですが、

まず
①私は日本人なのに中国人(チーナ)と呼ばれる

これは、彼らの意識として、
・アジア人=中国人、と思っている人。
・中国人と日本人は違うとはわかっているけど、似ているんだから別に構わないと思っている人。
・違いは分かっているうえで、目が細い人をみんな「チノ、チナ(中国人)」と呼ぶ人。
これは、目が細いスペイン人のあだ名が「チノ、チナ」という場合も多いことからもわかります。

つまり、
日本人だとわかっていて、わざと嫌がらせで、
「チーナ」と呼ぶ人は皆無に等しいと思います。

別に悪いとも思っていない。
スペインの人たちの意識がそんなものなのです。

身体の不自由な人に対してや、身体的特徴などについての発言も、
時々、はっとすることがありますが、
差別しているのではなく、事実を述べている…的な理論を聞かされることが多く、
そこに悪気や他人を傷つけている意識が全くない時が殆どです、

「アジア人はみんな中国人でいいじゃないか」という意識は残念ですが、
今の時点では、仕方がないことだと私は思います。

今はそんなことないかもしれませんが、
「日本で見る外国人は、全員アメリカ人だ」と思っている人がいる、
ということと似てますよね。

②叫ばれるのは差別かどうか

じゃあ、中国人じゃないことは別として、
「チーナ」と道で叫ばれることについて。

これは、状況や言い方などによって、受け止め方も変わってきますが、
殆どの場合、からかっているように、ちょっとバカにしているように言われます。

これが問題です。

殆どの在西日本人が「チーナ」と呼ばれて不快感を感じるのは、
中国人と間違えられたからではなく、バカにしたように呼ばれるからだと思います。

彼らが、中国人・韓国人・日本人の区別がつかないのは当然のこと。
私たち日本人でも「あの人、日本人っぽいけど?えっ、中国人?」と思うときも多々ありますから。

ただ、道で、わざわざ知らない人に向かって「チーナ」と叫ぶ必要があるのか?
やはり普通に考えて、リスペクトに欠ける行為ですよね。

そして、もう一つ、よくあるのが、
これも道を歩いていて「ニーハオ」と言われること。

これも受け取りようによっては、
彼らは私のことを中国人だと思っている→親しみを込めて私の母国語で挨拶してくれている、
と取れないことではありません。

ただ、やはり残念なことに、
言い方、トーンなどから、明らかにバカにして言ってると思ってしまう状況の方が多いです。

そして、驚くことに家族連れの子供に言われることもあり、
それを横で見ている親も何も言わずに、一緒に笑っているということも結構あります。



実際に受けた不快だった出来事

私の約12年間のスペイン生活の中で、
数回、不快な出来事がありました。

と書いてもわかるように、
そう頻繁に起こることではなく、ほんの一握りの人たちからだけだということを、
付け加えておきます。

そして、それが全てスペイン人だとは限りません。

ロケ中に7.8歳の子供が「ニーハオ」とカメラに入ってきた

最近では、コルドバの人混みでカメラの前で喋っていた時、
大家族のグループとすれ違いました。

そして、すれ違い際にかすかに「ニーハオ」という声が聞こえたのですが、
カメラも回っていたし、離れて行ったので気に留めていなかったその時、
その子供が戻ってきてカメラの前で立ち止まり、
大きな声で「ニーハオ」と言って笑って去って行きました。

そして、走って行った方を目で追っていくと、
そこにはさっきの大家族(大人がほとんど)がいて、
「ニーハオ」と言って戻ってきた子供と一緒に、こっちを見て皆でくすくす笑っていました。

もちろん彼らは、カメラが回っていて、
その子供のせいで中断しなければならなかったことは、わかっていたはず。
下手をすれば生放送だと思っていたかも。
それだと尚更たちが悪いですが。

郵便局で完全無視された

郵便局に荷物を出しに行ったとき。

私「Hola!」
窓口女性「…」
私「日本までお願いします」
窓口女性「…」
私「あっ、トラッキングありでお願いします」
窓口女性「…」
窓口女性 無言でレジの料金部分を指さす
私 払う
窓口女性 無言でお釣りを差し出す
私「Gracias」
窓口女性「…」

と一度も私の顔を見ず、完全無視されたことがありました *_*
本当に、まるでそこにいないかのように扱われたのですが、
それでも「風邪でも引いて声出ないのかな?」と思ったりしていました。

そして次にまた、その女性の窓口にあたったとき。

私「Hola!」
窓口女性「…」
私「日本までお願いします」
窓口女性「…」
私「あっ、トラッキングありでお願いします」
窓口女性「…」

そこに、後から来たパートナー(地元人)登場。

すると、
窓口女性が「Hola!」と、私とパートナーを見て挨拶したのです *_*

emi
emi

Madre mía…声出るやん…

Me quedé con la boca abierta…
ビックリし過ぎて、開いた口がふさがりませんでした..。

そして、送り終わった後も、しっかりパートナーだけに、
「Gracias!」と、おっしゃったのでした *_*

まー、これでけでは私がアジア人だから無視したのかは、わかりません。
ただ単に、私のことが気にくわなかったのか、
女性は嫌いなのか、
地元人としか話したくないのか、

知らんけど。

人生でこんなに完全無視されたのは初めて。
しかも、客として行ったところで。
差別云々ではなくても、日本ではあり得ない状況ですね。

ちなみに、以前よく行っていたマラガの郵便局では、
長い間、本当に親切にして頂いていました。
わざわざ、時間をかけて私のために調べ物をしてくれたり、何度も説明してくれたり。
ほとんど友達のようにもなりました。

だから、
一部の人(この場合は一人)だけの話だということを、
もう一度、付け加えておきます。



ZARAのレジで堂々と抜かされた

ZARAのレジで並んでいた時。

次が私の番で「siguiente!(次の方)」と呼ばれた瞬間、
突然、どこからか偽金髪(髪を染めた)スペイン人の上品そうなご婦人が出てきて、
私が行くべきカウンターに、さーっと行ってしまったのです。

emi
emi

えっ、何が起こった...?

一瞬の出来事で、本当に何が起きたのかわからなかった私。

えっ?抜かされた?
まさかー?
いやいや、そんなはずはない。
あの人、きっと私より先に来て並んでたんだ。
そうだ、そうに違いない。

と頭の中が混乱していると、
私の後ろに並んでいた人から

「ちょっと、抜かされたんじゃない?」
という声が。

「私もそう思ったんだけど。でも、まさか…」というと、

その女性が、
「アジア人だから抜かされたのよ!私もラティーナ(ラテンアメリカ出身)だから時々、同じ目に合うのよ!」
とお怒りの様子。

えっ、そんなことあるの?
これもアジア人だからかどうか、定かではありません。

全く関係ないかもしれない。
ただ、スペイン人同士だと、抜かされることを黙って許すことはまずないと思うので、
問題になるはず。
だから、そんなことは多分しないでしょう。

外国人の場合、言葉も分からないし、
たぶんシステムも知らないだろうから、抜かしてもわからないだろうし、
分かったところで文句言えるだけの語学力がないし、
と思われたかも。

いずれにしても、
あんなに上品で礼儀正しそうなご婦人が…。
ダブルショックでした。

銀行で「あの中国人、ここで何してるの?」と子供に言われた

銀行に行くと混んでいて、人が大勢並んでいました。

私も順番のナンバーが書いてある整理券を取って並んでいると、
前にいた女の子がじろじろこちらを見ていました。

そして、横にいたお父さんらしき人に、
「なぜ、ここに中国人がいるの?」と訊いたのです。

するとお父さんは、こっちを見ながら、彼女の耳元でぼそぼそっと囁き、
その後、二人で私を見てくすくす笑いました。

とても、きちんとしたご家庭のお父さんとお嬢さんという印象でした。

そこで、私は、
「あのねー、私は中国人じゃなくて日本人なのよ。
そして、中国人も日本人も、あなたたちスペイン人と同じように銀行に来るのよ」
と言いました。

子どもにというより、お父さんに聞こえるように。

すると、お父さんは、
ちょっと気まずそうに、どうも、どうもというジェスチャーをしました。

まー、この件も、
差別といえるかどうかは微妙ですけどね。
女の子は単純に私が中国人だと思い、
何故外国人なのに銀行にいるの?と素朴に思っただけかもしれないし。

ただ一つ言えるのは、
大人たちの認識不足は否めないと思います。

まだ細かいことは色々ありますが、
経験談はこの辺で。



差別だとわかったときどうする?

さて、実際に差別だとわかったときどうするべきか?

これも、こちらに在住の日本人の間でも、
度々、話題になることですが、
私は、知らない人の場合は、何も反応しないことにしています。

上の最後の例で、反応してしまいましたが、
そのようなことも今はしません。

というのは、
まず、そんな知らない人と、分かり合える可能性自体がゼロに近いし、
それ以外に、日本の常識では考えられないこともたくさんあるからです。

自分のアイデンティティを守るためとか、
日本人は何も反論しないというイメージがあるから何か言って示さないととか、
理論ではわかりますが、
そんなきれいごとじゃない場合が多いので。

相手がどういう人かもわからないし(←これはスペインでは特に重要)
自分はネイティブじゃないので言葉の使い方を間違えることもあるので、
自分の国じゃない言葉のハンディもある国で、知らない人とは争いません。
これが友達とか恋人とか、対お店とかとなると話は別ですが。

汚い言葉を使ってしまうだけで訴えられたりってこともありますし、
また、それを挑発してくる人もいますから。

私が職場で、他の先生(スペイン人ではない)から、
私が使った後の教室がいつも汚いと、しつこく言いがかりをつけられたとき、
(唯一クラスの後、10分かけて掃除してから帰っていたのは私なのに*_*)

弁護士さんは、
真っ先に「侮辱した言葉使いをされなかった?」と訊いてきました。
「もし、そうだとしたら訴えることができるよ」と。

何にでも言いがかりをつけてくる人の話や、挑発にはめられた人の例などを聞いていると、
関わらないのが一番いいと思います。

あと、話し合いになると「日本では、まさか常識的に言ってそんなこと…」ということも、
スペインでは当てはまらないことも多いですし。

物理的に何か害を被ったりしたら別ですが、
少しぐらいメンタルを挑発されたぐらいでは、無視をする。

それは泣き寝入りということではなく、
気にならないようにメンタルを持っていく。
心ではなく頭を使って、そこにこれからも住みたいと思っているのなら、
滞在させてもらっているその国のシステムを受け入れるようにする。(差別を受け入れるということではありません)

そして、その国のいいところを、改めて考えてみる。
それが、一番いい方法だと思います。

と、ここまで紆余曲折があったスペイン生活13年目、現時点での私の考えですが、
また年月、経験とともに変わっていくかもしれませんし、社会が変わって行ってくれるかもしれませんね。

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